活動記録
ACTIVITY REPORTS

北海道セッション開催報告

2019年12月10日

2019年度EDGE-NEXT共通基盤事業レジリエント社会の構築を牽引する起業家精神育成プログラム
復興のプロセスを振り返って考える未来のレジリエンスー神戸・東北・北海道を巡るー
北海道セッション開催報告

2019年11月2日-4日
11/2 厚真町・安平町フィールドワーク
11/3 ワークショップ 於)小樽商科大学サテライトオフィス
11/4 アイディア発表会 於)北海道大学学術交流会館
開催内容:ガイドブック・開催リーフレット参照

概要

平成29年から始まったEDGE-NEXT (文科省次世代アントレプレナー育成事業、以下EN事業)は、既存のアントレプレナー教育成果や課題を発展させ、研究開発成果をシーズとして、起業や新事業創出に挑戦する人材を育成する事業である。このプログラムを学んだ受講生が、産業構造に変革を起こし、イノベーションをリードするように成長することをめざしている。全国5グループの大学コンソーシアムが結成され、この事業を進めている。東北大学主幹校のEARTH on EDGEコンソーシアムはその1つであり、北海道大学・小樽商科大学、京都大学・神戸大学・宮城大学から構成される。文科省EDGE コンソーシアム共通基盤事業 は、EN事業の大学コンソーシアム間を越えて、日本全体のアントレプレナー育成プログラム向上をめざす事業であり、平成31年度は、文部科学省から東北大学が幹事校に指定され、「レジリエント社会構築を牽引する起業家精神育成プログラム」のプログラム開発と実施を統括している。
「レジリエント社会構築を牽引する起業家精神育成プログラム 復興プロセスを振り返って考える未来のレジリエンス」のプログラム開発は、2018年11月より開始し、教育プログラムとしての実証を兼ね、3ヶ月間のプログラムに組成され、EN事業実施機関から、11大学の学部生・大学院生を含む20名の受講生を対象に、2019年9月より実施された。
北海道セッションは、9月の神戸セッション、10月の東北セッションに続いて、北海道で開催されるプログラムである。尚、台風19号の接近で東北セッションを中止したため、代替プログラムとして10月14日にオンライン講義を提供した。現地フィールドワークは、北海道セッション終了後の12月に開催が決定している。

1.胆振東部地震現地フィールドワーク:11月2日(土)

本プログラムの特徴の1つに、災害被災地のフィールドワークがある。神戸セッションでは、「人と防災センター未来センター」でフィールドワークを行い、被災経験を持つ語り部のヒアリングや地震シミュレーション体験、膨大な資料から自らの課題解決のための情報を集めて分析する等のトレーニングを行った。北海道セッションでは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、北海道胆振東部地震という、規模も特徴も全く異なる自然災害を検証し、俯瞰的に捉える視点を持つための教育コンテンツとして、厚真町と安平町のフィールドワークを組み入れていた。プログラム受講生は、本プログラムで習得することを目指す4つのスキル(「社会システムの理解」「極度の状況変化の予測」「自助・共助・公助のアプローチを有する」「防災・減災の価値と経済的価値の両立」)のうち、特に、「自助・共助・公助のアプローチを有する」「防災・減災の価値と経済的価値の両立」のスキルアップと、事業モデルの立案と及びアウトプットに取り組んだ。受講生には、神戸セッションでの学び以来習得してきた様々な知識・思考方法・方法論を整理し、自分なりのものに捉え直し、それらを使って具体的な事業アイディアに落とし込むという、難易度の高いワークが課せられた状態で、一人の欠席者もなく、北海道セッションの出発地点、千歳空港に到着した。いよいよ、日常の大受講生活とはかなり異なる状況(合宿)でのワークの始まりである。早速、厚真町・安平町の現地視察、ヒアリングに向かった。
厚真町と安平町の現地視察、ヒアリングの目的は、北海道胆振東部地震の災害の規模と特徴と、復旧・復興プロセスの現実を直視し、その実態を踏まえて、防災・減災/復興を牽引するビジネスモデルを立案することにあった。そのためには、自治体が担う機能と、民間が担う機能を認識する必要がある。厚真町経済局産業経済課の宮久史主幹に被災現場をガイドの下で、厚真町における土砂災害の実態を目の当たりにした受講生たちは、他地域の災害の質や規模の違いのみならず、先の神戸とは全く異なる、社会システムとその背景、それ関連する産業構造へのダメージの違いを理解した。厚真町のケーススタディは、災害規模、種類、それがどこで起きるのかによって、「公助」が占める比率が異なることを示唆している。習得する4スキルの1つである「自助・共助・公助」の視点を、実感を伴って理解できた瞬間だった。
続いて、厚真町役場内のミーティングルームで、宮氏へのヒアリングを行った。宮氏は、自治体の職員として、どのように復興に関わってきたのか、復興が進む上で障害になっていることや、新しい産業が生まれるために必要なことを、ローカルベンチャースクール等の実例を挙げて解説された。ご自身の体験を踏まえての話は受講生にとって非常にわかりやすく、「自助・共助・公助」それぞれの限界と、それを克服するポイントを見出すヒントを与えられた。

次に、安平町を訪問し、オープン直近の同町復興ボランティアセンターの拠点施設「エントランス」にて、副センター長の林賢治氏より同氏が復興に取り組まれている動機、安平町がめざしているまちの姿についてレクチャーいただいた。林氏へのヒアリングからは、復旧から復興のプロセスで何が起きるのか、また、それにどのように対応するのかについて具体的に知ることができた。災害後の復旧から復興のフェーズを担う組織(非営利組織 or 営利組織)、ビジネスを組み立てる手順、マーケットとの向き合い方等を構想する際に求められる示唆に富んでいた。受講生へのアンケート結果によると、「民間」でできる領域を広げていこうとする安平町における復興ボランティアセンターの活動事例から、公助の比率(国の関与)の大きい厚真町との対比軸を感じとった受講生も少なくない。
厚真町の宮氏に対しても、安平町の林氏に対しても、受講生からの質問が途切れることがなく、ファシリテーターが時間切れを告げると、嘆息が漏れる程だった。札幌の宿舎では、東北セッションがなくなったために削られたグループワーク・個人ワークの時間を捻出(懇親会を中止)し、宿舎のラウンジを解放したところ、殆どの受講生が、朝方まで個々の事業ブラッシュアップに取り組んだ(ファシリテーターも伴走した)。

2.レジリエンス社会を実現するための事業を描くグループワーク:11月3日(日)

小樽商科大学サテライトオフィスを会場に、いよいよ事業アイデア発表の準備に入った。この日は、中止した東北セッションのコンテンツである「自助・共助・公助」概念の理解と、それぞれの視点及び限界、更には、ビジネスモデル立案の経営資源を、「自助・共助・公助」から調達するアプローチを考えさせるレクチャーを実施した。このレクチャーでは、神戸・東北での学びの振り返りと、厚真町・安平町のフィールドワークからの気づきを比較することも行った。続いて、4つのスキルの1つであり、ビジネスの骨子となる、「防災・減災/復興の価値と経済的価値の両立」について、フレームワークシートを用いて解説した。ここでは、これまで、「拡散と収縮」をしながら事業を練り上げてきたことを再確認し、自ら描くレジリエンスビジョンと、それを実現するためのビジネスアイディアの組み立て方を学んだ。また、個々のビジネスモデルの発表準備と並行して、発表のルール、発表資料の作成方法、発表時に必ず押さえるポイントについても、レクチャーとワークを行った。
ワーキングチームは、本プログラムの最終局面で、受講生のプレゼンをサポートするためのコンテンツとして、「ワークシート」を作成し、神戸セッションから受講生に提示し、その活用を促してきた。基本的なロジックを定めて、その細部をワークシートに記入することができ、更に、別途提供する「発表用スライドフォーマット」にワークシートの内容を描き出すことができれば、「防災・減災/復興を牽引するビジネスモデル」をデザインすることができるのである。実際に、受講生がそれらのツールを利用して、そこまで到達できるか否かは、やってみるまでわからなかったが、神戸・東北セッションに参加できず、北海道セッションのみ参加した2人の受講生を含め、20名全員がこのレベルに到達した。
晴れ舞台を明日に控えた高揚感と緊張感の中で、受講生たちは互いにプレゼンしあい、そのフィードバックを繰り返すとともに、該当する専門領域の教員からのアドバイスを受けてブラッシュアップを続け、個々の頭の中にだけあった事業アイディアが、発表コンテンツに固められていった。各自のプレゼンの準備に際して、ファシリテーターは、個々の受講生の事業案のレベルアップを図るとともに、疲労したり、思考が止まってしまう受講生には、アイスブレークを促したり、リラックスできるようなコンディションを作りながらワークを続けた。前日に続いて、この日も受講生・教員ともほぼ徹夜であったが、途中でドロップアウトする受講生はいなかった。

3.レジリエンス社会の構築を牽引するアイディア発表会開催報告:11月4日(月)

全国の11大学から参集した受講生が、9月神戸セッション、10月東北セッションで、レジリエント社会を牽引するためのスキルを学び、北海道での厚真町・安平町視察とワークショップ「レジリエント社会の実現のために、レジリエンスを高める事業を描く」でアイディアを磨き、防災・減災/復興の価値と経済性の両方を追求してデザインした事業アイディアを披露する時を迎えた。
発表会に先立って、関係者(文部科学省斉藤卓也課長、東北大学矢島敬雅理事、北海道大学瀬戸口剛工学院長)からの祝辞に続き、協賛企業(株式会社ネクスコ・メンテナンス、株式会社IHIインフラシステム、株式会社玉川組)、協力機関(北海道立総合研究機構)、後援・機関/自治体(北海道大学広域複合災害研究センター、安平町復興ボランティアセンター、厚真町、安平町)の紹介、安平町復興ボランティアセンター/はやきた子ども園の井内聖氏による基調講演「義を見て為ざるは勇なきなり~前にすすむ力~」があり、受講生と教員、上記協賛・後援組織の関係者によるクローズドのブランチビュッフェを挟んで、アイディア発表会が開催された。

(1)アイディア発表会前プログラム

基調講演「義を見て為ざるは勇なきなり~前にすすむ力~」
安平町復興ボランティアセンター/はやきた子ども園井内聖氏
開催者は、受講生が、「レジリエンス起業家精神」の育成をめざす本プログラムの最終段階で、井内氏の講演に触れることにより、今一度、復興に挑む行動の原点にあるものに触れる機会を提供したいと考えていた。井内氏は、日本人の災害におけるレジリエンスには公徳心があるのではないかと言われる。行動をおこす人とは、どのような人なのか。安平町の復興の前線で、自治体・民間の垣根を超えて、教育の実践を拠り所として取り組む、井内氏のアプローチから、受講生は、安平町の復旧・復興の現場で起きたことや、今も続いている困難なこと、更に、子供達と町の未来のことやビジネスや事業について理解を深めた。受講生アンケートによると、「行動することの重要性、行動する動機」を学んだと答えている。

ブランチビュッフェ

11:10-12:20、受講生、教員、協賛・後援組織、文部科学省並びにJST関係者等の参加者全員が、立食のブランチビュッフェで一堂に介し、交流の機会を楽しんでいただいた。受講生は、講評者となる安平町長、玉川組社長、協賛企業のネクスコ・メンテナンス関東およびIHIインフラシステムの方々に、アイディアをピッチ形式で聞いてもらい、フィードバックを受けて、最後のブラッシュアップに生かしていた。主催者となる東北大学はじめ参画大学教員には、プログラムの内容・特徴・可能性を、実際に、多くの方々に知っていただく機会として、生かしたいという思いがあった。ブランチビュッフェを通じて、教育機関・自治体・企業・文科省等、その属性が異なっても、起業家を育成する目的を共有する関係者間で、一層の協力関係を築き、ネットワークを広げ、プログラムの精度向上とその社会化を図る気持ちを新たにした。

(2)アイディア発表会
概要

レジリエント社会を牽引するアイディア発表会は、前後2部に分かれ、「レジリエント社会の構築を牽引する起業家精神育成プログラム 復興のプロセスを振り返って考える未来のレジリエンスー神戸・東北・北海道を巡るー」プログラムに参加した20名の受講生より、「レジリエンス社会の構築を牽引するアイディアの発表」という形で開催された。発表者には、発表5分、質問2分が与えられ、大学・行政・企業の各分野から迎えられた6名の講評者と大学・自治体関係者、文部科学省・JST関係者、受講生等オーディエンスを前に、3ヶ月で完成させたアイディアを披露した。
講評者には、本発表会と一般的なビジネスコンペとの違いを説明し、レジリエンス社会の構築を牽引する起業家に求められる4つのスキル(①社会システムの理解、②極度の状況変化の予測、③自助・共助・公助のアプローチの理解と資源調達、④防災・減災/復興の価値と経済的価値の両立)の習熟を評価基準に設定していることをについて了承を得、またオーディエンスにも同様の趣旨を予め周知した上で行われた。
防災・減災/復興を牽引する事業アイディアは、以下の20プランである。

防災・減災/復興を牽引する事業アイディア(順不同)
壱岐 星彩也(名古屋工業大)「地域のレジリエンスを高めたい」
稲垣 直人(早稲田大)「ローカルバッファー」
宇津 敬祐(東北大)「ボランティア活動に従事する大学生への支援」
三島 春香(神戸大)「配置薬モデルを利用した非常用持ち出し袋の常備」
手島 あかね(宮城大)「楽しめるまち山元町」
小野寺 聖(北大)「ぼくらで作ろう(繕う)みんなの 『Do 路』- 平常時/非常時に機能する道路状況通報システム -」
小六 祐輝(神戸大)「防災カフェ」
塩満 圭太(神戸大)「会社・地域間「共助」」
清水 孝文(北大)「HitchHiter助手席派遣サービス~楽しいドライブ実現アプリ~」
西 祐大(神戸大)「ハザード・ゲーム」
土屋 宏斗(静岡大)「わがままに生きよう~熟議民主主義の補完~」
大野 真輝(名古屋工業大)「外国人観光客を津波から守る」
中山 莉花(宮城大)「おひとり様コレクティブハウス」
田中 惇敏(九州大)「Project Pri-Resilient victims.」
南良 亮太(神戸大)「災害時の資金調達問題を解決する新しい銀行」
日野 涼介(京大)「1.5番目の居場所」
望月 貴文(北大)「箱庭ゲームを現実社会に」
綿貫 琴子(宮城大)「ペットと人の災害ユートピア」
澤岡 善光(神戸大)「未来を手繰る糸の紡ぎ」

講評

本発表会の講評者は、以下の通り(敬称略)である。
及川秀一郎(安平町長) 玉川祐一(株式会社玉川組) 宮久史(厚真町産業経済課)
井内聖(はやきた子ども園園長/安平町復興ボランティアセンター)
中田千彦(宮城大学教授) 木谷哲夫(京都大学教授:講評者統括)

発表されたアイディアへの講評:木谷哲夫教授総括

私には、神戸震災時歩いて家に帰った経験がある。通常のビジネスコンテストとは違って、災害がテーマのこのプログラムは、「復興・レジリエンス」という縛りがあることを認識してはいた。そのような前提でどのようなプランが出るのか心配していたが、普段気がつかないニーズが見つかった。例えば、非常用持ち出し袋、ペットのニーズ、エコノミー症候群対策、リモートで参加意識を高めるなど。「復興・レジリエンス」をテーマにすると、むしろ、アイディアを発想しやすいのかもしれない。今日的な傾向としてソーシャルに貢献したいという意識も高まっている。立地にこだわらず、どこにいても貢献できる程、テクノロジーも発達している。一般的なグローバルベンチャーのビジネスコンペよりも、未来的なアイディアが生まれた。
この発表会には、5つのポイントがある。
第1に、構想フェーズと、実際にやるフェーズの間に差がある。だからこそ実際にやって欲しい。やりながら改良して、より精度の高いものにしていって欲しい。第2に、企業からの意見として、「実際にやってみるためのフィールドと活躍の場を提供したい、成功のための協力を惜しまない」との言葉をいただいた。第3に、行政からの意見として、「災害時のアイディアとして聞いていたが、受講生さんは、災害時だけでなくて、平常時にも活用できるものを同時に考えていた。災害時に限局しないで、365日役に立つようなサービスに繋げて欲しい。そうなれば、行政も連携しやすい」とのコメントがあったことを紹介したい。第4に、教育機関の意見として、「レジリエンスは、今日重要な概念。教育機関が関与すべき。小中高から大学までずっと一貫して、対応しなければならないテーマ。教育機関の立場では、合理的側面の教育内容に偏っている。襟を正さないといけない」との講評があった。
最後に、課題の発見とその解決案は、一般的にすぐ出てくる。今日の発表では、「道路の修復」など、公共と民間の中間の事業が多かったことが特徴としてあった。課題の発見とその解決案がわかっても、その間が繋って、その真ん中が動かないと解決しない。今回は、中間支援的なアイディアが多かったが、そこをテーマにしたところに新しさ、可能性がある。
レジリエンスとは何か、みなさんのお話を聞いて思ったことは、逆境ということ。逆境があって、それに抵抗し、そのダメージを抑えて、逆に創造的なチャンスに繋げて行く強さに変えて行くことかと思う。
今日、熱い思いを持っている受講生さんに会いました。ぜひ実際にやって欲しい。実際にやろうとすると、しょぼくなってしまうことがある。しょぼくならないで、熱い思いのまま、チャレンジし続けて下さい。

尚、プログラム終了時、文科省 斉藤卓也課長(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)より、以下のコメントをいただいた。
被災地の大学が中心となったこのプログラムに楽しみに、今回の発表会に参加した。大規模噴火・大型台風・南海トラフなどの大震災などのリスクが想定されている。長い歴史をみると、日本人は、そうした災害を乗り越えてここまで来た。若い人がそのことを考えることはとても大事だ。でも、通常時にその準備をして幸せをどう作って行くのか。防災関連で独立したビジネスにしようとしても難しい。発災後には、国も補正予算を組み、企業もお金を出す。しかし、発災前にお金を出すことは難しい。そこを如何に組み込めるのか、税金の使い方を一緒に考えましょう。
国の方針や政策は、いきなり天の声で決まることはなく、現場の経験を踏まえて、それとリソースを結びつけて提案される。結局、現場の前線の方々が動かないと国も動かない。大学のサポートがないという声もあったが、大学には多様な先生たちのリソースがあるので相談して欲しい。文科省もできる支援をします。個人では小さな声も、声を集めて発信してくれると聞き届けられる。違う大学の人たちと一緒に考えて発信して欲しい。文科省はウエルカムです。いつの時代も大きな変化は若者が起こして来た。サポートが必要であれば、文科省も、大学の先生、企業、行政みんながサポーターになってくれます。

教育効果の測定

このプログラムは、3つの評価デザインを有する。3つとは、(1)運営・提供コンテンツへの満足度調査、(2)4つのスキルの習熟度に関する調査、(3)課題解決のあり方と進度に関する調査である。(1)により、プログラムで提供する内容や、時間配分、情報量、表現方法、ファシリテーターのアプローチ等の妥当性を測定し、プログラム運営上の問題点と、受講生が体得したメリット、デメリットを把握する。このデータは、次回のプログラム組成に瞬時にフィードバックする。これにより、プログラムのリアルタイムの改善が可能になる。(2)により、開催前に定義した教育効果のルーブリック評価指標に対し、一人一人の受講生が、各指標5段階のレベルのどの段階までを習熟しているかを定量的に把握する。(3)により、最終プレゼンに至るまでの、受講生の事業アイディア立案レベルと速度を定性的に把握し、サポートが必要な受講生にはファシリテーターが伴走することにより、事業案の底上げを図ることができる。上記フィードバックの他に、(1)-(3)の評価結果は、次段階のプログラム開発に反映させる。
常に変化する世界情勢や、複合的な災害に直前する地域コミュニティにおいては、セクターの別なく、緊急の事態に対応することのできる人材が求められている。そうしたニーズに即応して、人を育てる教育プログラムの開発手法もまた、求められている。複数の大学を横断し、多領域分野を包含しつつ開発し、更に開発されたプログラムを、大学教育のみならず、自治体、地域ビジネス、地域コミュニティ等で活用していく必要がある。
「防災・減災 / 復興を牽引する人材育成」に焦点を合わせて、上記広範なエリアにネットワーキングを形成しながら教育カリキュラムを開発し、リアルタイムでインストールすることをめざす本プログラムは、上記の今日的な要請に応える1つのプラクティスを提示している。

今後の展開

3回シリーズで開催した本レジリエンス育成プログラムは、無事に終了した。本プログラムでは、東北セッションが中止になったために、発散して部分を収束するフェーズに時間をかけることができなかったが、受講生のアンケート調査の速報からは、当初想定した教育目的は達成されたと思われる。従前のビジネスコンテストや起業家教育プログラムでは出てこない20のアイディアが生まれたことが、それを表している。
今年のプログラムの実証結果を検証して、次年度の教育プログラムを立案する予定である。2年目に国内横展開、3年目に海外に展開するプログラムに刷新することを目指し、本プロジェクトを継続したい。

研究成果アウトリーチ

・イノベーション教育学会 2019年度年次大会 ポスター発表
・日本評価学会 第20回全国大会発表(予定)
「防災・減災/復興を牽引する起業家育成プログラム開発と評価デザイン」

以上